遺言書の作成

 

​目次

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遺言書の効力

 遺言書は遺言をする方がご自身が亡くなった後の財産の承継や葬儀などについての希望を書面で残しておくものです。

 遺言の内容は遺言者が誰の意向にも縛られることなく自由に決めることができます。

​ 遺言書の内容は二つに分類されます。

​1.遺言事項

 法律的な効力を生じる遺言書の本体部分です。

 遺言で定めることができる事項は民法によって決まっています。

​ その内容は財産の承継に関するものがほとんどです。

 ①何を、②誰に承継させるかを明確に書く必要があります。

 また、遺言者が亡くなる前に承継させる方が亡くなってしまうとその部分の遺言が無効となってしまうため、仮に承継させる方が先に亡くなった場合に誰に承継させるかを定めておくことも重要です。

 特に年齢の近いご配偶者がいる場合はこの定めは必須と言えます。

 遺言に条件を付けることもできます。例えば「お母さんと同居し面倒を見続けることを条件として自宅建物を長男に相続させる」等です。  

 配偶者居住権について

 令和2年4月1日から「配偶者居住権」の条項を設けることができるようになりました。

 これは遺言者と同居していた配偶者に、生存中に自宅に住み続ける権利を与えるものです。

  詳しくはこちらをご覧ください。

2.付言事項

 法律的な効力はないものの遺言者の思いを相続人に伝える部分です。

 この事項がなくても遺言の法的効力に影響はありませんが、遺言者の思いや願い、また遺言の内容を決めた理由を相続人に伝えることも大切です。

 相続人の中には遺産をあまりもらえず不満を持ってしまう方もいるかもしれません。

 それでも遺言者が遺言の内容を決めた理由や、遺言者の思いが相続人に伝われば納得できることもあるかと思います。

 後で触れる遺留分侵害額の請求を防ぐためにも付言事項はなるべく書いておいた方がいいと思われます。

3.遺言書の効力

 

 遺言書にはとても強い効力があります。

​ 遺言をした方が亡くなった後、その内容で財産を渡す相手とされた方は、遺言書と戸籍等の書類を持っていけば、不動産の名義変更でも預金の解約でも他の相続人の協力を得ることなく一人で手続ができてしまいます。(ただし、遺言の種類が公正証書遺言である場合のみ。他の形式の遺言は家庭裁判所で「検認」という手続が必要となります。)

 遺言書がない場合は、遺産分割協議で相続人全員の同意がもらえなければ亡くなった方の財産を動かすことはできません。

 このように遺言書があると亡くなった方の意思が直接反映され、後の手続も非常に楽になります。

 相続人の争いを防ぐために遺言書を残しておくことは大変有効な手段と言えます。

​ なお、財産をもらえなかった相続人は、最低限もらえる財産の額(遺留分といいます。)に相当するお金を多くもらった相続人に支払うことを請求することができます。ただ、この権利は遺留分が侵害されたことを知ってから1年以内に請求しなければ行使することができなくなってしまいます。

遺言書の種類

 遺言書には3種類の形式があります。(特別の方式の遺言を除きます。)

1.公正証書遺言

2.自筆証書遺言

​3.秘密証書遺言 

の3種類です。

それぞれで作成方法や遺言者が亡くなった後の手続が違ってきます。

 

​1.公正証書遺言

 公証人が本人に内容の確認をして作成する遺言です。公証役場に出向いて作成するのが一般的ですが、公証人に出張してもらって作成することもできます。

 公証人が内容のチェックをしてくれるため、確実なものができて安心です。

 現在ではこの方式の遺言書​が一番お勧めです。

​ 特徴

・公証人のチェックがあるため確実なものができる

・遺言者が120歳になる時まで公証役場で原本を保管してもらえる

・相続人が全国の公証役場に遺言書が保管されているかの検索ができる

・遺言者が亡くなった後の検認をする必要がない

 以上のような特徴があります。

​ 他の2種類の遺言は原本が無くなってしまえばどうにもならないですが、公正証書遺言は原本の保管と検索ができるため、相続人がどこかに遺言書があるという事を覚えてさえいれば、遺言書を発見できることになります。

 検認が不要な点についてですが、検認の手続は家庭裁判所に申立をする必要があります。

 経験のない方が検認の申立てをするのは大変ですし、専門家に依頼すれば費用がかかってしまいます。

 公正証書遺言は作成時に費用がかかる点がデメリットですが、遺言内容の確実な達成のためには最も有効な方法と言えるでしょう。

​2.自筆証書遺言

​①特徴

​ 他人の関与なく一人で作成できるため、手軽であることが一番の特徴です。

 ただ、誰かの関与がない分内容のチェックがされないため有効性の確認はされません。

 一方、偽造防止のため方式が厳格に定められているため、少しのミスによって遺言全体が無効と判断されることも珍しくありません。作成する際は専門家の助言を得た方がいいでしょう。

 遺言者が亡くなった後に発見されないリスクを避けるため、相続人の誰かに渡しておくか保管場所を知らせておくことが大切です。

 家庭裁判所で検認の手続が必要です。遺言書に封がされている場合は検認の時まで開封してはいけません。勝手に開封してしまうと5万円以下の過料(罰金)が課せられる可能性があります。

②自筆証書遺言の保管制度の新設

 令和2年7月10日から自筆証書遺言の法務局での保管の制度が始まります。

 制度の詳細はまだ明らかではありませんが、この制度を利用すれば検認の手続は不要となるようです。

 また、法務局で遺言の内容のチェックがされることになるようです。ただこのチェックも公証人のチェックと同じように形式を備えているか否かのものですので、専門家に作成に関与してもらう方がより遺言者の意図を汲んだものができるでしょう。

​3.秘密証書遺言

 

 秘密証書遺言は誰の目にも触れることがなく作成できます。ただ、この点は自筆証書遺言でも同じことです。また、証人を用意する必要がありますし、公証人の手数料も発生します。そして遺言者の死亡後の検認の手続も必要になります。

​ また、人の目に触れない分チェックを経ることがなく、形式的な不備があっても指摘してくれる人もいないため、有効であるかも不確かになってしまいます。

​ 以上のように他の2つの方式と比べてメリットが少ないため、ほとんどこの方式が利用されることはありません。

遺留分の問題

​1.遺留分とは何か?

​ 遺留分とは遺言書によって少ない財産しかもらえなかった相続人が、最低限要求できる遺産の取り分のことです。

​ 相続人が遺留分を下回る財産しかもらえなかった時は、遺留分に足りない部分について、財産を多く受け取った他の相続人に対してお金を支払うよう請求することができます。

​ この権利を遺留分侵害額の請求権といいます。

 ただし、この請求は遺留分の侵害を知った時から1年以内にしなければ請求する事ができなくなってしまいます。

​ この遺留分の請求権は相続人として当然の権利ですが、遺産が自宅建物くらいしかないケースで、自宅に住んでいない相続人から遺留分の請求をされてしまうと、自宅を売却しなければならなくなることもあります。そのため遺言をする際に、遺留分に配慮した財産の分け方をするか、付言事項で財産をあまりもらえない相続人に遺言者の思いを伝えておくことが大切です。

​ なお、遺留分の問題で自宅を売却せざるを得ない状況を回避するため、令和2年4月1日以降に作成する遺言書には「配偶者居住権」の条項をつけることができるようになりました。

 

配偶者居住権

1.配偶者居住権とは何か?

​ 配偶者居住権は、遺言者と同居していた配偶者の、その生存中に相続財産である自宅建物に無償で居住し続ける権利をいいます。

 相続財産に自宅建物以外の金融資産などがあまりないと、遺産分割の際自宅を売却せざるを得ない場合があります。例えば以下のようなケースです。

​事例

亡くなった方 夫

相続人 妻、子供1人

相続財産

 自宅の土地建物 評価額:2000万円

​ 預貯金                 1000万円

 この状況で、子供が法定相続分の1500万円分の遺産が欲しいと主張したとします。

​ そうすると、妻は子供に遺産を取得させるために自宅を売却しなければならなくなります。

​ 結果

  妻が取得する財産  1500万円(自宅は売却して現金で受け取る)

  子供が取得する財産 1500万円

 

 子供がこういった主張をするのは、道義的には問題があると思いますが、法律的には正当な主張となります。しかし、これでは妻が長年住み慣れた自宅を追われることになり、あまりにも酷な結論となってしまいます。

​ そこで、子供に自宅土地建物の所有権を取得させ、妻に配偶者居住権という住むための使用する権利を取得させることによって、配偶者の保護を図るのが配偶者居住権の目的となります。

2.配偶者居住権の活用

​従来の対処法

​ 以上ような事態を避けるため、従来は遺言を活用していました。

​ 上記の事例で夫が「妻に全ての財産を相続させる」という内容の遺言を残していたとします。  この場合の遺産の配分はどうなるでしょうか?

*子供が遺留分侵害額の請求をした場合

 妻が取得する財産 

  自宅土地建物(2000万円)

  預貯金250万円 

  (合計2250万円)

​ 子供が取得する財産

  預貯金 750万円 

  (合計 750万円)

 

 子供の遺留分:3000×1/2(遺留分率)×1/2(法定相続分)=750万円

 以上のように、自宅売却は避けることができました。ただ、預金のほとんどを渡してしまい今後の生活に不安が残るところです。

 それに加えて、遺言書は亡くなった方が生前に作成しておくものですので、亡くなった後に対処しようとしても打つ手はありません。 

​配偶者居住権の活用

それでは、配偶者居住権を活用するとどのような結論になるでしょうか。

​①遺言がないケース

 遺産分割協議で妻が自宅の配偶者居住権を、子供が自宅土地建物の所有権を取得し、預貯金は均等に配分します。

​ 妻が取得する財産 

  自宅の配偶者居住権

  (評価額1000万円)

  預貯金 500万円

 子供が取得する財産

  自宅土地建物の所有権 

  (評価額1000万円)

  預貯金 500万円

*配偶者居住権の評価額は算定方法があり、一律評価額の半額というわけではありません。算定方法については、専門的でわかりにくいため説明は割愛します。

遺言がなくても自宅と預貯金の半額を確保することができました。

​②遺言をするケース

​ 遺言書で「自宅の土地建物を子供に相続させる、妻に配偶者居住権を遺贈する、妻に預貯金全額を相続させる」とされたとします。

 *遺贈するとしているのには理由がありますが説明は割愛します。

​ 妻が取得する財産 

  自宅の配偶者居住権

  (評価額1000万円)

  預貯金 1000万円

 子供が取得する財産

  自宅土地建物の所有権

  (評価額1000万円)

遺言をしておけば、妻は実質上全ての遺産を取得したのと同じ条件で生活することが可能となります。

 このように遺言と配偶者居住権を活用することによって配偶者が安心して過ごす事ができるようになります。

 ぜひご活用ください。

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